事務所のリフォーム / 天秤ホゾのデスク製作過程


今回デスクの製作をお願いしたのは、いつもお世話になっている静岡の伝統工芸品・楠細工を伝承している楠工房さんです。
素晴らしい匠の技をお持ちの工房です。

「天秤ホゾのデスク」製作過程をほんの一部ですが、楠工房さんのご協力を得て掲載させていただきます。
「天秤ホゾ」は楠細工で使われている伝統的な仕口です。
匠の技をご覧いただき貴重な職人技を感じていただけたら幸いです。
きっと無垢材の家具が欲しくなりますよ。


剥ぎ材
デザインをお見せして、材料、時間、予算を照らし合わせながら、どんな方法で製作するか楠工房さんと相談です。
オフィスの場合は特に限られた時間内でリフォームをするので、無垢材で家具を造るにはかなり厳しいです。

無垢の1枚板で製作するには、材の乾燥に長い時間をいただかなくてはなりません。
そこで今回は4枚の板を剥ぎ合わせた「剥ぎ材」での製作としました。

楠工房さんで長年乾燥させていたチェリー材ですが
、製材後2週間程かけて材の表面をゆっくり空気にふれさせ乾燥させます。
各材の木目、性質を読みながら伝統の工法で剥ぎ合わせ、板材に仕上げていきます。
乾燥  
各材の乾燥方法です。

各部材は大きめに切り分けた後、両面に空気が当たるように立てかけ、材が動きたい放題にさせるそうです。
そして毎日機械で平滑にするという作業を
4〜5回繰り返すことで平面を落ち着かせます。

呼吸している木と職人さんが毎日会話をしながら、木の性格を読み取ってあげているのですね。
これだけ手間をかけるとチェリーちゃんは親元から離れても、おとうさんの言いつけを守り、まっすぐな良い子でいてくれるそうです(^^)
 
手鉋 楠工房さんは無垢材を手鉋で仕上げてくださいます。
昔は鉋仕上げは当たり前でしたが、今ではデスクのような大きな板を手鉋で仕上げてくれる家具職人さんはめったにおりません。
匠の技 匠の技。
屑といっては申し訳ないほど美しいです。
「鉋くず」はまるでレースのようです!

この薄さで削るには、鉋の調整を度々行わなければなりません。
削っては調整、削っては調整・・・1日に何度も鉋の調整を繰り返し美しい表面に仕上げていきます。
鉋仕上げ そして仕上がった面がこちらです。

鉋仕上げの素晴らしさは、このように削った面が鏡のように美しく光ることです。
木を削っただけで、無塗装の状態にもかかわらず仕上面は景色が写るほど美しく反射します。
サンダー仕上げでは絶対にこのような輝きは出ませんね。


本当に切れる刃で木を削ると、木材はこんなにも美しく輝きます。
既製品の家具では絶対に味わえない感動です!

ほぞ加工1 いよいよ仕口の加工です。

こちらは天秤ほぞ、脚のオスほぞ部分です。
細心の注意をはらって鋸で溝を入れていきます。
少しでも狂ったら組んだ時に隙間があいてしまう緊張の作業です。
 ほぞ加工2   鋸で入れた溝をノミで落としていきます。
チェリーは堅い木なので、ひとふりひとふり緊張の連続で、集中力を要するたいへんな作業です。
 
ほぞ加工3 次に天秤ほぞ、天板のメスほぞ部分の加工です。
ドリルで孔をあけ、ノミで少しづつ落としていきます。
ほぞ加工4
  天板、メスほぞ部分の完成です!
とても美しいです!
天秤ほぞ 天秤ホゾの完成!!!
ひとつひとつの三角に隙間なくピッタリと納まります。
驚異的な職人技です。
素晴らし〜い!
楠細工に伝わる伝統的な仕口で、釘を使わずデスク部分が完成しました!!!


そして完成品はこちらです