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  シーン設計工房・一級建築士事務所  
    ●集合住宅建設のためのアドバイス
     
  1.何を一番大切に考えるか

土地の有効利用を考える時、自宅用の敷地に自宅を含んだ建築を建てる場合と自宅用以外の敷地(事業用敷地)に計画する場合があります。
計画にあたって、いずれの場合も何を一番大切に考えるかを整理することが大切です。

1.自宅の快適性(自宅を含む場合)
2・収益性・安定性
3.環境への配慮
4.税金対策
5.良質な住宅の供給
6.その他・・・

上記にあげたように各々の方が抱えている問題からいろいろな観点で計画が進められていきます。
大切なのはご自身が何を大切に考え、どんな目的をもって計画に望まれるかをはっきりとすることです。ひとつに絞ることはできないと思いますので優先順位をつけておくと良いでしょう。 
 
   
 
  2.安普請のアパートにならない為に

集合住宅の建設を考える時、収益性・安定性というのはどなたにとっても重要なことです。
集合住宅の建設は自宅とは違い資金を投資して収益の上がる建物を建設するわけですから、簡単に考えればできるだけ初期投資を少なくし、高い家賃がとれれば収益があがります。『すぐできる、ローコストの集合住宅』が理想のように思われます。
しかしどんなに効率が良くてもこの状況が長く続かなくては困ります。

賃貸住宅は極端な言い方をしてしまえば、新築であればどんな安普請の集合住宅を造ってもすぐ入居者が埋まります。しかし何年かたち『新築物件』という名前がなくなった時、それではあきらかに市場で競争力を失います。
すぐできるということと、安いということできちんと検討もせずに造ってしまったオーナーさんたちが5~6年後、痛い目にあっています。

集合住宅の建設は大きな事業です。せっかく投資しながら財産価値の無いものが手元に残るということになっては計画は大失敗です。
時間が経過しても時代のなかで生き延びられるもの、息の長い物件を造っていくことが重要なことです。
 
 
 
 
  3.普通のマンション

計画をする時やはり気になるのは、空室がたくさん出てしまったらどうしよう、、、毎月の返済金額は決まっているのに家賃収入が安定しなくては当然不安になります。
ですから普通のマンションをつくり、そこそこの家賃がとれ、毎月順調に廻っていけば良いと考えます。
こうしてリスクをおかさず、すべての人が「この家賃ならば、まあこんなものかな」と納得するマンションが出来上がっていきます。一般的なマンションは全員が合格点を出すような平均的なものをつくる手法になることが多いです。こうして世の中には普通のマンションがあふれていきます。

借り手はその中で新築のもの、便利な立地、家賃が安いところと選択していくわけですから、そのような「普通のマンション」をつくったのでは、多くの似たようなものの中から選択されるものの1つになってしまいます。

同じような物の中で評価を得るのは難しいことです。
 
   
 
  4.あのマンションに住みたい

計画をする時、発想を変えてすべてのひとに普通の評価をもらうのではなく、100人中20人位の人に評価されれば良いと考える方法があります。
いくつもある物件の中で比べられて評価を受けるのではなく、「あのマンションに住みたい」と思わせるようなマンションを造るのです。

消費者ニーズが多用化している現在、普通のマンションを造るのではなく、「こんな人たちに住んでもらいたい」と明確にターゲットをしぼり、その人たちにとっては理想のような住宅を供給していくのです。

ターゲットの絞り方はいろいろです。
どんな人たちに住んでもらいたいか、どんな人と集まって住みたいか、 同じ問題を抱えた人たち、同じ趣味をもった人たちの集合住宅。たとえばペット可能であったり、防音設備完備で楽器の練習ができたり、在宅勤務の人たち用、ちょっと収入のいい単身者やディンクス用など・・・。

ターゲットの絞り方は、その敷地条件やオーナーさんの考え方で様々ですが、ターゲットを絞ったらその人たちにとっては他に無いような快適な仕様にしてあげることです。

そのように計画されたマンションは、ターゲットとされた人たちにとっては理想の住まいであり「あのマンションに住みたい」と空室待ちのリストができていきます。こうなればオーナーさんにとっては空室の心配は無くなります。
また入居者の人たちにとっても、賃貸でありながら<自分の望む住宅に住む>という思いがかないます。

このように計画された集合住宅が息の長い物件になると考えています。
 
   
 
  5.重要なのはコストバランス

敷地の容積いっぱいに造ることが土地の有効利用になるとは限りません。
建設費も各々の立地にあわせ、どのような入居者にターゲットを合わせるかにより変わってきます。

各々の地域の特性や立地条件により家賃の相場というものがあります。
高い家賃を望めない地域では、容積いっぱいに建て安く造ることが最重要課題になる場合もあります。過剰な設備を整え高級マンションを作っても、そのようなマンションを借りる人が住んでいない地域では、空室だらけとなってしまいます。

また逆に、設備の整ったマンションの需要がある地域では建設費をかけ、ゆったりとした計画をすることにより、収入の良い人たちにターゲットを絞った高い家賃設定のマンションをつくれます。このような地域でターゲットをまちがえ、建設費をおさえた安普請のマンションを造ったのではかえって収益は悪くなり、消費者ニーズにこたえることもできません。

重要なことは計画全体のなかで、地域にあったコストバランスを考え、新しい時ばかりではなく時間がたってもいつまでも住みたいと思う入居者があらわれるような、息の長い計画をすることです。
 
   
 
  6.誰の需要に答えるのかを明確にする

「百貨店」と言われたようにデパートの品揃えは多く、何か欲しいものがあればデパートに行けば、だいたいどんなものでもそろいました。しかしこのような方法では、毎年売り上げは下がる一方で、ここ数年デパートの品揃えもさま変わりしてきました。

すべての人に納得してもらえる品揃えをしてきたノウハウが頭うちになり、デパートも立地により品揃えを変えるようになりました。会社帰りのOLさんが多い都心のデパートは若い女性向けの品揃えにし、背後に住宅地をかかえるデパートでは、ファミリー層をターゲットにしています。

消費者ニーズが多様化した現在、不特定多数をターゲットとした売り方はもはや通用しないのかもしれません。
賃貸住宅市場においても不特定多数をターゲットとしたマンションは、結局はだれにとっても住み心地の良い住宅とはなりえないのではないでしょうか。

こんな生活をして、こんな余暇を楽しみ、こんなことを大切にしている人、というように入居者の人物像を明確に思いうかべ、その人の需要に答える造り方のマンションにしていく。
ライフスタイルが多様化した現在、誰でもが住めるマンションではなく、ターゲットとした人たちが満足する住宅を造っていく。
そのような造り方が、賃貸住宅市場を活性化させていくと思います。
 
   
 
  7.デザイナーズマンションとは

最近雑誌や新聞でもたびたび取り上げられている「デザイナーズマンション」という言葉をお聞きになっているかたも多いと思います。

デザイナーズマンションとは、ハウスメーカーや建設会社の設計施工で建てられたのではなく建築家や、意匠の設計事務所が関ったマンションをそのようにマスコミは呼んでいるようです。

いままでのマンションの造り方は、収益性やローコストということが最重要課題で、デザインを良くするという発想がありませんでした。
そんな状況のなか、デザインの良さも付加価値の一つとしてデザイナーズマンションが登場してきました。

それらのマンションが何故注目を浴びているのでしょう。

オーナーさんの立場からみると、デザイナーズマンションを造るとすぐに満室になり、空室率が低いということが注目をあびている第一でしょう。いままでにないちょっとおしゃれなマンションは、20~30代の人たちに需要が多く、空室待ちの状況になります。
このようになればオーナーさんにとっては一番の問題の空室の心配が無くなります。

そして入居者の側からも注目されている理由は、自分自身のライフスタイルにあったマンションであるということでしょう。
賃貸住宅市場は誰にでもそこそこ合うような、公団タイプの間取りがほとんどでした。それらの間取りでは、現代のさまざまなライフスタイルを持つ人々の需要に、もはや答えられない状況のなか、デザイナーズマンションが彼らの需要に答えているのだと思います。

オーナーさんにとっての経営の安定性と、入居者にとって希望する住宅であるということが、両者に評価されていることで注目されているのだと思います。
 
   
 
  8.息の長い物件

収益性を良くしたいというオーナーさんの考えと、できる限り安い家賃で自分の望む家を借りたいという入居者の考え方は、相反することのように思えます。

しかし新しい時だけでなく、いつまでも「あのマンションに住みたい」という入居者があらわれるような集合住宅をつくることは、マンションを建設するオーナーさんにとっても、賃貸住宅をさがしている人たちにとっても良い環境が出来ていくと思います。

このような集合住宅ができた時、そのマンションは息の長い物件になり、ストック住宅として残っていくと思います。
 
   
 
  9.プランの比較



いままでのマンションの造り方とターゲットを絞ったマンションの造り方をプランで比較してみましょう。

上図はまったく同じ広さの33㎡(10坪)の間取りです。
①は単身者にターゲットを絞ったプランです。
②はいままでのマンションに良くある間取りで、単身者から小人数世帯までが住める一見よさそうなプランです。このようないろいろな人が住めるプランをつくっておけば空室の心配はないと造られてきました。

しかし単身者が10坪のマンションを借りる時、都心であれば家賃は10万をこえます。10万を超える家賃を払うことができる単身者が②のようなプランを望むでしょうか。

彼らのライフスタイルはもはや②のようなプランは必要なく、広い空間を望んでいます。
①のプランは水廻り部分をコンパクトにまとめ、黄色の部分は広いワンルームです。可動家具を壁に寄せれば広い1部屋になり、家具を中央に移動させれば2部屋としても使用できます。
これはオネイロスの部屋のひとつですが、単身者のライフスタイルに合い好評のプランです。
 
     
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