11.賃貸住宅の将来像
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毎朝新聞を開いてみると環境問題がとりあげられていない日はありません。環境に配慮していない企業は21世紀には生き残れない時代になり、環境問題ぬきではものが造れない時代になってきました。これは建築においてもしかりです。
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産業廃棄物といいますと製造業などの廃棄物と思われがちですが、なんとその45%が建設系廃棄物だということをご存知でしょうか。また1件の住宅を建て替える時に出される廃棄物の量は、普通の家庭から出されるゴミの35年分に相当するということを知ると、日頃こつこつと環境問題に気をつけている奥様たちはゾッとするのではないでしょうか。
建築物をつくるということは、建替えの場合でも新築でも、現在の自然環境を変えるという点で環境に影響を与えていますが、このように廃棄物のことでも大きく環境問題とかかわっています。
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もうひとつの数字も日本の住宅の将来像にヒントを与えてくれます。
日本の住宅の寿命はどれくらいかご存知でしょうか。日本の住宅の平均寿命は世界的にみて驚くほど短いのです。海外と比較するとたとえばアメリカが44年、イギリスでは75年、これに比べ日本は26年でスクラップにされています。歴史的に多くの石造りの建築を持つヨーロッパの事情を差し引いても、やはり日本の住宅の寿命はたいへん短いです。
消費することが美徳とされていた高度成長時代を経てきた日本は、住宅でさえ消費の対象になってしまったのです。その上賃貸住宅は相続税対策の名目で、住むことを目的ではなく借金をすることを目的にスクラップアンドビルドをしてきました。
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以上ふたつの現実を考えた時、これからの時代はスクラップアンドビルドを繰り返すのではなく賃貸住宅、持ち家の住宅にかかわらずストック住宅として息の長い建築をつくっていくことが大切だと思います。
賃貸住宅の将来像として安普請の仮住まいを供給するのではなく、息の長い良質の住宅を供給していきたいと思っています。
しかし現実の問題として、長く住むことのできる家族向けの良質の賃貸住宅を供給しようとすると、どうしても家賃が高くなってしまいます。
これではオーナーさんのリスクも高いですし、借りることのできる入居者も限られた層の人たちになってしまいます。都心の良い立地ですと、家族向け高級賃貸住宅というのも一つの方法ですが、そのような立地条件の地域はほんのひとにぎりで、多くの場合にはあてはまりません。理想としては一般的なサラリーマンでも充分借りることができ、将来の不安もなく住むことができる良質の賃貸住宅を供給することです。
そのような賃貸住宅を供給できれば、所有にこだわらない人たちの需要に答えることができます。
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では、こんな理想のような話に答える方法はあるのでしょうか。
その答えの一つとしてスケルトン賃貸と呼ばれている造り方があります。これは定期借地権などを使い、構造体と設備の動脈(排水管、水道管、電気の各住戸の取り出し口まで)はオーナーさんが造り、内装や住戸内の設備は入居者が自分の負担で造っていく方法です。
賃貸者は構造体にかこまれた空間をオーナーさんから借り、内部は自由に使います。
ちょっとわかりにくいので具体的に説明しますと、たとえば100㎡の土地にワンフロアー80㎡の5階建てのコンクリートの箱を造ったとします。100㎡の土地を一人の人に貸すのではなく、電気・ガス・排水管が引込み済の80㎡×5層の土地を5人の人に貸すと考えればわかりやすいです。各々の借地人は80㎡に区切られた箱を、たとえば35年間借ります。借りた箱のなかは35年間自由に使え、分譲マンションを購入するよりは安く、なおかつ自分の好きなような間取りの自由な内装で住むことができます。オーナーさんは35年間の賃貸収入が約束されます。
いろいろ法規的なことや税制上の話も出てきますのでこの紙面では説明しきれませんが、こんな方法をとれば理想論ではなく新しい賃貸住宅の方向が見えてきます。
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このようなスケルトン賃貸のようなシステムを利用していく方法や、前回のターゲットを絞って造っていく方法など、どれも一つの選択肢ですがそれらに不動産の証券化などをからめていけばさらにいろいろな方向が見えてきます。
どの方法を選択しマンションを建設していくかはいろいろですが、息の長い良質の賃貸住宅を造っていく事が、今の時代の課題なのではないでしょうか。 |